自由きままに芸術鑑賞

自由気ままに芸術鑑賞

~舞台人による、舞台人のための鑑賞記録~

『スーパーマリオ30周年記念ライブ』

ファミコン」と言えば「マリオ」。

そう呼んでもいい程、「スーパーマリオブラザーズ」はファミコンの歴史上に大きく名を刻んだゲームソフトである。

彼と共に人生を歩んできた人たちにとって、マリオはヒーローであり、エンターティナー。世代を問わずファンの人生に彩りを与えたことだろう。

ゲームで遊んだことがない人でも、マリオと言えばあの赤い帽子に、ひげもじゃの、重力に逆らったジャンプをするあの容姿が目に浮かぶのではないだろうか。

ゲームで溢れる現代、こうも幅広い層に支持されるキャラクターはきっと多くはない。そういう視点から見ても、彼を日本ゲーム界の代表したヒーローと言える。 そんな日本の誇りとも言えるこのゲームが、今年、2015年に30周年を迎えるというのだ。

 

30年を祝う企画はあちらこちらであったものの、飛び抜けて贅沢な企画がこの『スーパーマリオ30周年記念ライブ』だ。

ゲームBGMを、なんと惜しげもなく、ライブで演奏するというではないか。マリオを有名にさせたのはその画期的面白さにあるが、もう一方で音楽が影響していると思う。

マリオの容姿を思い出す時、必ず脳内に流れるのは、あの「地上BGM」や「コイーン」といった効果音のはずだ。そういった数々の音楽や効果音ををゲーム史に残し、ファンの想像力を駆り立てたマリオ音楽。本来脇役かもしれないBGMを主役にさせ、前面に押し出したライブとは一体どんなものなのか。

それを知るべくいちファンとして純粋に興味を持った。公演は大阪と東京でたった1公演ずつ、チケットは抽選といった、何とも倍率の高い貴重な公演だった。私はくじ運良くチケットを入手し東京公演を観賞してきた。

会場に着くと、溢れんばかりの人、人、人。限定グッズもあるようで、30分以上も前から長蛇の列を成していた。世代を越えて人気のあるスーパーマリオはやはり親子(特に父息子)での来場が多く、世代を超えて人気があるということを、改めて実感させられるところであった。

ゲーム系のイベントということで、コスプレーヤーの集まりを予測していたが案外少なく、どこで買ったかマリオとルイージの帽子をかぶっている子ども達の多くを見受ける程度だった。

開演に至るまで、ロビーのそこかしこで聞こえてくるのは個々人が好きなゲーム面の話し。

「ギャラクシーが…」「マリオカートの…」「やっぱり初期の…」などなど、年齢関係なく話しに花を咲かせている。皆、これから広がる音楽の世界を待ちきれんばかりと
いった具合に興奮しっぱなしだっだ。

客席に入ると、舞台上にはすでに演奏者用のスタンドと椅子か並べられており、雛壇がもうけられていたが、そのひとつひとつの舞台セットがなんともファン心を揺さぶるものだった。雛壇はブロック塀、宙にはブロックと弾き出されたコイン、舞台上手奥にはピーチ城、そして下手前には緑のドカンといった舞台セットだ。正面奥にはでかでかとスクリーンが用意され、これから起こる出来事を想像せずにはいられなかった。

ライブは司会のトークで始まった。今回の司会は、いわゆるニュースや式場の「司会」ではなく「気の良いお兄ちゃん」といった感じでとても好印象。このフランクなスタイルが観客の1人ぽさを醸し、また興奮で舌を噛んでしまうところも、観客の代表といった風で適任だった様に思う。

いざ曲が始まると、「こういうスタイルか」と少し残念な気持ちになった。何故なら、今回バンドバージョンとして演奏されているものは、全てアレンジがかかっていたからだ。

もちろん「バンド」と称されている以上、ゲーム同様の単純音が聴けるはずがない。ただ、それでもあの単純音が聴けるものとばかり想像してた私としては、バッチリアレンジのかかった、楽器豊富な音楽に少々面食らってしまった訳だ。

会場を見渡せばそんな私をよそに会場は大盛り上がり。観客は音楽に聴き入り、音に身を任せ、手拍子をしていた。

演奏中、スクリーンでは各音楽が使われたゲーム面(シーン)を、マリオが進む映像が流され、より奥行きのある世界を堪能することができた。 そんなアレンジの聴いた音楽を聴きながら、思い出にふけっていたのだが、クライマックスで演奏されたクッパメドレーだけは私の身体も激しく反応した。

メドレーは『ヨッシーアイランド』ラスボスのクッパBGMからスタート。エレキギターを掻き鳴らし、燃える様に赤い照明が舞台を覆った。ヨッシーの背中に乗るベビーマリオを捕らえようと、一歩、また一歩と近づくクッパがスクリーンに映し出されれば、会場のボルテージも最高潮に。当時なかなか倒せなかったボスを目の前に、またほとんどアレンジのない曲を身体が素直に受け入れ、これには感極まって号泣してしまった。

とにかくエレキがかっこいい。比較的長めのパーマだった北島さんがクッパに見えたのは、きっと私だけではなかったはずだ。クッパ音楽のクールさを改めて前身で感じ、作曲者を心から称えた瞬間だった。

その後演奏されたのはギャラクシー系の音楽だったので、プレイした事がない私にとっては知らない曲ばかりだったが、一曲一曲がなかなか良い。時代的にゲーム音楽を作る上で出来る事が増えたこともあり、もともととても綺麗なBGMが多いが、ライブでは奥行きのあるアレンジで、銀河を駆ける雄大さや壮大さをより体感でき音楽そのものを楽しむことが出来た。

今回ライブで演奏された曲以外にもBGMは山ほどある。この日に演奏出来なかった曲数の方がきっとずっと多いだろう。

ゲーム、キャラクターと共に愛され続けたマリオの音楽。それは決して過去だけのものではなく、現在のものでもあり、未来のものでもあり続いていくのだ。その凄みを心に重く感じながら、日本の誇りと称賛した。

スーパーマリオはきっとこの先も、ずっと「スーパー」であり続けるだろう。

『マリオ』の曲はとにかく楽しくということを心がけてきました。―近藤浩治/作曲家(パンフレット『スーパーマリオ30周年記念ライブ』より)
それまでのテレビゲームは、背景が真っ黒なものがほとんどだったのです。ところが『スーパーマリオ』は、青空の下、緑の草原を駆け巡ることができました。そのようにとても明るいゲーム画面を見たときに「これは革命的なゲームになる」と確信しました。 ―近藤浩治/作曲家(パンフレット『スーパーマリオ30周年記念ライブ』より)
(ジャンプ音はいるのかと反論した近藤に対し)ボタンを押したときに手応えがないとゲームじゃないので、ジャンプ音は必ず入れなさい。 ―宮本茂/ゲームディレクター(パンフレット『スーパーマリオ30周年記念ライブ』より)

 

音楽のアレンジ

もともとファミコンの時代では同時に僅か3音しか発音出来なかったが、今回ではそんな音楽でさえも、バリエーション豊かなバンド編成になっている。また、ブラスやバイオリンを入れるなど、新しい試みをしており、ゲームの世界に留まらないアレンジが感じられた。

偉人3人のトーク

今回の企画で凄かったことは、スペシャルゲストとして近藤浩治手塚卓志横田真人の、3名のトークがところどころで入ったということだ。

ライブだけでもかなり満足度の高い企画だったが、これはファンとしてはかなり貴重な経験である。通常ゲームを通してでしか称賛出来ない彼らの活躍を、同じ空間で直接称えることが出来た。この演出には全てのファンが驚き、感動したことであろう。

トークの内容は、ゲームを創作する過程でのあらゆる秘話についてだったが、その深さといったらトークだけでライブが成立するのではないかという程で、途中「音楽ライブ」に来たのか、「トークライブ」に来たのか分からなくなった場面もあったくらいだ(笑)。

あらゆるトークが成された中で、記憶に1つ心に残ったものがある。近藤浩治の言葉だ。

効果音を生み出すのも、エンドロール音楽を生み出すのも労力は同じです。 ―近藤浩治/作曲家(『スーパーマリオ30周年記念ライブ』内トークより)


各面の音楽や効果音に関しては注文や制限があり、難攻の上に仕上がった音楽であるが、スタッフ名が出るエンドロールだけは全く制限がなく、近藤の自由に任せていたそうだ。

これは、最後の音楽くらいは自由に作らせてやりたい、というメンバーの計らいがあったかららしい。 しかし、当の本人にしてみれば、全くの自由というのもなかなか苦労したという。

特にシリーズが続くにつれてスタッフ数も多くなり、長い音楽を作らなければいけない難しさもあった。そんな話の中で出てきたのが、先に紹介した、“効果音を生み出すのも、エンドロールを生み出すのも労力は同じ”という言葉である。

これは、彼の仕事を非常に具体的に、かつ印象的に説明した言葉だと思う。今、マリオと聞いて思いだされる沢山の音は「効果音」ではなかったか。その数々の効果音、しかも1秒よりも短いかもしれない一瞬の音に対して、かなりの時間をかけたということだ。

行動を印象付ける効果音は、非常な試行錯誤の上に生みだされた音だということを意味している。そしてそれは、どんなに自由度があったとしても、長い音楽を作らなければいけないエンドロールを作る労力に等しく、どれも妥協を許したものではないということだ。

勿論、想像や直感によって生まれた音楽も多々あっただろう。しかし、採用されなかったものも多くあり、全てが一筋縄で行った訳ではない。そういう日々の地道な挑戦の失敗の繰り返しの中に、今、「マリオの代名詞」とも言える音楽が私たちの記憶に刻まれているのだ。

 

公演詳細

会場/東京国際フォーラム ホールA
日時/2015年9月21日(月・祝)
開場/17:00
開演/18:00
席種/A席1階
公式HP/『スーパーマリオ30周年記念ライブ』

出演者
⇒『スーパーマリオ30周年記念ライブ』 スペシャルバンドメンバー 画像集はこちら

音楽監督&キーボード/笹路正徳
バス/田中晋吾
ドラム/川口千里
ギター/北島健二
ギター&バンジョー/秋山浩徳
パーカッション/ASA-CHANG(アサ・チャン)
ヴァイオリン/SAYAKA
トランペット/西村浩二
トランペット/LUIS Valle(ルイス・バジェ)
トロンボーン中川英二郎
バストロンボーン/朝里勝久
サクソフォーン/吉田治
サクソフォーン/庵原良司
サクソフォーン/山本拓夫
キーボード&ヴォーカル/小田朋美
MC/吉田尚記

コンサートスタッフ

舞台監督/中尾享一、中川聖一(クリエイト大阪)
音響/近藤健一朗、琴谷中、岡優美(KENTEC)安藤拓也(サンフォニックス)
楽器・ローディー/小黒正明、山下竜平(サンフォニックス)
照明/大濱貴司、友田充香、永津雄司(BIG1)
映像/中嶋一嘉(映像センター) 、大矢剛之(DAYS)、cozzino
美術/中山裕人、佐藤由紀子(日本ステージ)
トランスポート/榎本裕之(藤田事務所) 、笹路正徳
マネージメント/大矢朋広(みみたぶ)
ミュージシャン コーディネーター/関谷典子(フェイスミュージック) 、益子和孝(ニッポン放送)
企画・制作/飯島則充、高杉慎一郎、石原啓(PROMAX)、須賀浩二、須賀雅子(ハーモニクス・インターナショナル)
プロモーター/リバティ・コンサーツDISK GARAGE
協力・監修/任天堂株式会社、近藤浩治手塚卓志横田真人、永田権太、峰岸透、 松永亮、藤井志帆、朝日温子、大坪大剛、柴田麻里

パンフレット・ムービースタッフ

編集・制作/坂井一哉(アンビット)
執筆/左尾昭典、冠美花
協力/kikai、古谷正人、茂呂優太、佐藤大
撮影/中道昭二
デザイン/有限会社フリーウェイ
DTP/有限会社ウィッチ・プロジェクト
発行日/2015年9月20日
発行元/PROMAX
印刷/凸版印刷株式会社
定価/2,500円(税込)

 

スーパーマリオブラザーズの歴史

※以下、パンフレット『スーパーマリオ30周年記念ライブ』より引用。
スーパーマリオブラザーズ
発売日/1985年9月13日
対応機種/ファミリーコンピュータ
備考/WiiUニンテンドー3DSバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオブラザーズ2
発売日/1986年6月3日
対応機種/ファミリーコンピュータディスクシステム
備考/WiiUニンテンドー3DSバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオブラザーズ3
発売日/1988年10月23日
対応機種/ファミリーコンピュータ
備考/WiiUニンテンドー3DSバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオランド
発売日/1989年4月21日
対応機種/ゲームボーイ
備考/ニンテンドー3DSバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオワールド
発売日/1990年11月21日
対応機種/スーパーファミコン
備考/WiiUバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオUSA
発売日/1992年9月14日
対応機種/ファミリーコンピュータ
備考/WiiUニンテンドー3DSバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオランド2 6つの金貨
発売日/1992年10月21日
対応機種/ゲームボーイ
備考/ニンテンドー3DSバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオ64
発売日/1996年6月23日
対応機種/Nintendo64
備考/WiiUバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオサンシャイン
発売日/2002年7月19日
対応機種/ニンテンドーゲームキューブ

スーパーマリオブラザーズ
発売日/2006年5月25日
対応機種/ニンテンドーDS
備考/WiiUバーチャルコンソール配信中

スーパーマリオギャラクシー
発売日/2007年11月1日
対応機種/Wii
備考/WiiUでダウンロード版配信中

NewスーパーマリオブラザーズWii
発売日/2009年12月3日
対応機種/Wii

スーパーマリオギャラクシー2
発売日/2010年5月27日
対応機種/Wii 備考:WiiUでダウンロード版配信中

スーパーマリオ3Dランド
発売日/2011年11月3日
対応機種/ニンテンドー3DS

Newスーパーマリオブラザーズ2
発売日/2012年7月28日
対応機種/ニンテンドー3DS

NewスーパーマリオブラザーズU
発売日/2012年12月8日
対応機種/Wii

スーパーマリオ3Dワールド
発売日/2013年11月21日
対応機種/WiiU

スーパーマリオメーカー
発売日/2015年9月10日
対応機種/WiiU

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