自由きままに芸術鑑賞

自由気ままに芸術鑑賞

~舞台人による、舞台人のための鑑賞記録~

『TAMA21交響楽団 第21回定期演奏会』

ストラヴィンスキーの『春の祭典』を生で聴きたい。

そう思い始めてから10年が経とうとしていたある日、出会ったのがこの『TAMA21交響楽団 第21回定期演奏会』だった。この公演で、なんと『春の祭典』を演奏をするという。

料金は1,000円ととても安かったため、逃したら次いつ聴けるか分からないという思いに駆られ、すぐにチケットを購入した。

TAMA21交響楽団とは多摩エリアを中心に活動する楽団で、著名な指揮者が率いるアマチュア楽団だ。楽団にどれ程の実力があるか定かではなかったが、この曲を演奏するだけの技術や技量があるのだろうと信じ、期待しながら当日を迎えた。

 


残念ながら期待は裏切られてしまった。 アマチュア楽団と分かりチケットを購入した上で、辛口になってしまい申し訳ないが、楽団の成長を期待して素直な感想を述べたいと思う。ストラヴィンスキーに敬意を表してのこととお許し頂きたい。

まず、この作品自体が「乙女の生贄」といった、クラシック音楽ではかなり珍しい内容ををテーマにしている。

音楽には「狂気」や「苦しみ」、「悲しみ」といった感情が打ち出されているため、血の滲むような様子を音楽で表現しなければならない。また演奏者自身もそれを体現しなければいけないのがこの音楽だ。

ましてやこれは「バレエ音楽」なのである。本来ならば舞台下のオーケストラピットで演奏し、舞台上には死に向かう乙女が狂う程に舞っている訳だ。音楽によって情景を表現し、感情に拍車をかけるのが演奏者の役割であるが、それを果たし切れていなかった様に感じた。

核となる「狂気じみたもの」が音楽によって表現されておらず、譜面をなぞるように音楽を弾いていた、というのが率直な意見だ。

演奏会と題しているので、技術の向上を発表する場と考えてもいいのかもしれない。それでも、この音楽を演奏することを選んだのであれば、もっと観客に訴える音楽を聴きたかった。

譜面どおりに弾くだけでも、並大抵の努力では足りない。きっと、基礎的練習をし、演奏技術を向上させてきてはいたのだろう。その上で、ストラヴィンスキーがどういった時代に、何故この曲を書いたのか、そしてこの曲に表現されている世界はどんなものなのかを勉強し、身体で感じ、身体を通して奏でなければならなかったと思う。

それをして初めて音楽が人へ訴えるものとなり、気持ちを揺さぶるものになるのだ。

また、気になった部分としてはパートごとの音の質である。オーケストラとは各パートが一体になってひとつの音を奏でるものだが、この楽団ではそれが乏しかった。

特に、強弱のつけかたにプロとの差が感じられた様に思う。音が大きなシーンはともかく、小さな音のシーンでは各演奏者の音が目立ち、パート毎の一体感がなくバラバラであった。そういったシーンこそパート毎で一体にならなければ、オーケストラとしての表現力に欠けてしまう。

特に気になったパートとしてはトランペット。緊迫感を誘う警報の様な役割を担っているが、本公演では音が割れ、ぼやっとした印象になってしまっていた。スッとした鋭い音、天地を裂く様な音を奏でる必要があったように思う。

私がこの曲をあまりにも敬愛しているため、厳しめの評価になってしまったが、アマチュアでこの曲に挑戦したことは大いに評価したい点である。また、公演を観終わった後にチラシを確認したが、メンバーがさほど豊富でもなく賛助が入っていたことを考慮すると、大きな壁に真正面から向き合ったのだと、素直に関心するところだ。

是非今後も濃厚な地域活動を行いながら、日々の成長に磨きをかけて頂きたい。今後の活躍を大いに期待している。

※今回、2曲目の『交響曲第2番ニ長調作品73』(ブラームス)は初めて聴く曲だったので、批評は控えようと思う。

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公演詳細

会場/オリンパスホール八王子
日時/2015年10月4日(日)
開場/13:30
開演/14:00
席種/自由席

プログラム

バレエ音楽春の祭典(35分)
作曲/イーゴリ・ストラヴィンスキー

≪第1部:大地礼讃≫
序奏
春のきざし
乙女たちの踊り
誘惑の遊戯
春のロンド
敵の都の人々の戯れ
賢人の行列
大地への口づけ
大地の踊り

≪第2部:いけにえ≫
序奏
乙女たちの神秘的なつどい
いけにえの賛美
祖先の呼び出し
祖先の儀式
いけにえの踊り

-休憩(20分)-

交響曲第2番ニ長調作品73』(40分)
作曲/ヨハネス・ブラームス

≪第1楽章:Allegro non troppo≫
≪第2楽章:Adagio non troppo≫
≪第3楽章:Allegretto grazioso≫
≪第4楽章:Allegro con spirito≫

アンコール曲
『サーカス・ポルカ:若い象のための』(4分)
作曲/イーゴリ・ストラヴィンスキー

出演者

指揮/ 井﨑正浩
演奏/TAMA21交響楽団
コンサートマスター/ 宮川エミ

スタッフ

主催/ TAMA21交響楽団
後援/ 八王子市 八王子市教育委員会 (公財)八王子市学園都市文化ふれあい財団
指導/ 石塚貴志(指揮者)、齊藤誠二(指揮者) 、齊藤政和(日本フィルハーモニー交響楽団ヴァイオリン奏者)、前田淳武蔵野音楽大学准教授) 、御法川雄矢(NHK交響楽団ヴィオラ奏者)

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